近年SaaSを導入する企業が増えています。SaaSは、クラウド上にあるソフトウェアをインターネットを通して利用できるサービスのこと。PCのインターネットブラウザやスマホのアプリで出退勤の打刻をしたり、交通費などの経費精算、営業に関わる情報共有をしたりと、ビジネスシーンで活用されています。
企業によっては、部門や部署別にSaaSを導入しています。社内で利用するSaaSが増えると、登録したアカウントや利用状況の管理、契約状況の把握などの業務負担も増えてしまいます。ここでは、BtoBでSaaSの導入が急速に進んだ背景と、今後の課題についてご紹介します。
目次
SaaSとは?
SaaS は「Software as a Servcie」の略で、「サース」または「サーズ」と呼びます。
クラウドの一種で、インターネットを経由してソフトウエアを利用できるサービスです。従来のようにパソコンにソフトウエアをインストールする必要がなく、インターネットを経由してデータを保存できたり、複数人で利用できたりします。1番身近なSaaSのサービスとしてはGmailなどのメールサービスがあります。その他にDropboxなどのオンラインストレージやサイボウズなどのグループウエアもSaaSに該当します。
BtoBでSaaSの導入が急速に進んだ背景
SaaSは、1998年頃から広まったASP(Application Service Provider)がもとになっています。ASP とは、インターネットを通じてアプリケーションを提供する事業者のこと。SaaSは、ソフトウエアそのもののことで、ASPは提供事業者やサービスの総称です。
2006年頃からASP に変わってSaaSという言葉が使われるようになってきました。日本で2008年に始まったオンラインストレージサービス「Dropbox」もSaaSの1つ。Dropboxのサーバー上にファイルをアップロードして管理・共有できるサービスで、初めは個人で利用されていましたが、その後、仕事でも活用されるようになっていきます。
2016年にはMicrosoftの「Office 365」(現在は「Microsoft 365」)が登場しました。
Microsoft が提供してきた、Word、Excel、PowerPointなどのソフトウェアを買い切り型のサービスではなく、サブスクリプションサービスとして発売されました。買い切り型のサービスの場合、新しいバージョンが出るとあらためて代金を支払う必要がありましたが、サブスクリプションサービスの場合、常に最新のソフトウェア利用できるのが魅力で、広まっていきました。
そして2019年に始まった新型コロナウィルスの感染拡大により、リモートワークが増加。企業は、遠隔地で働く社員の業務管理や勤怠管理をするため、クラウド上でBtoB のSaaS導入が急速に進んだと考えられます。その他に、仕事上の連絡や報告相談ではグループチャット機能があるSaaSを使ったり、会議ではビデオや通話機能があるSaaSを使ったりすることが普通になりました。
BtoB で活用されるSaaSの種類
企業によく利用されているSaaSには、以下のサービスがあります。すでに普段の仕事で使われている方も多いのではないでしょうか。
コミュニケーションツール | |
Zoom | ビデオコミュニケーションツール |
skype | クロスプラットフォーム対応のコミュニケーションツール |
Slack | ビジネスチャットツール |
Chatwork | ビジネスコミュニケーションツール |
オンラインストレージサービス | |
Dropbox | オンラインストレージサービス |
Box | 法人向けオンラインストレージサービス |
Google drive | オンラインストレージサービス |
営業支援ツール | |
Salesforce | クラウド型のビジネスアプリケーション |
HubSpo | インバウンドマーケティング&セールスソフトウェア |
Sansan | クラウド名刺管理サービス |
bellFace | 営業特化型Web会議システム |
Cisco Webex | クラウド型テレビ会議接続サービス |
クリエイティブ | |
AdobeCC | クリエイティブアプリケーションおよびサブスクリプションサービス |
経理 | |
SAP concur | 経費精算管理システム |
楽々精算 | 経費精算システム |
勘定奉行クラウド | クラウド型会計システム |
弥生会計オンライン | クラウド会計ソフト |
Freee | クラウド会計ソフト |
給与奉行クラウド | クラウド給与計算システム |
ジョブカン給与計算 | クラウド給与計算システム |
契約管理 | |
クラウドサイン | クラウド型の電子契約サービス |
クラウドMF | クラウド管理電子契約サービス |
人事管理 | |
SmartHR | クラウド人事労務ソフト |
ジョブカン採用管理 | 採用管理システム |
カオナビ | タレントマネジメントシステム |
グループウェア | |
Microsoft 365 | コラボレーションプラットフォーム |
サイボウズ Office | スケジュールタスク管理 |
desknet’s NEO | スケジュール管理グループウェア |
SaaS導入のメリット
SaaSを導入することのメリットは、次の4つがあげられます。
どこからでもアクセスできる
SaaSはアカウントで管理され、ソフトウェアやデータなどはクラウド上で共有されているので、インターネットに接続できれば他のパソコンや、スマホ、タブレットなど、端末が変わっても利用できます。場所を問わずに利用できるのは、コロナ禍でリモートワークを行うのに最適です。
簡単に導入できる
これまでソフトウエアを利用する場合は、パソコンやサーバーへインストールが必要でしたが、SaaSはインターネットのクラウド上にあるソフトを使うので、アクセスするだけ利用できます。インストールに割く時間や手間もかかりません。ログインするだけで使えるサービスが多く、メールアドレス、ID、パスワードなどのログイン情報があれば、すぐに利用できます。
導入費用が抑えられる
SaaSの利用料金は、従量課金制やサブスクリプション(定額料金を支払い利用するコンテンツやサービスのこと)の方式をとっている企業が多く、使用した分しか費用がかかりません。これまでのソフトウエアは、導入時に高額のライセンス料がかかったので、それと比較すると導入費用は安く抑えられます。
運用・管理の負担が少ない
SaaSの運用や管理は、サービス提供会社が行うため、自社でサーバーを管理する必要がありません。また、サーバーのメンテナンスやセキュリティーチェックなども行わなくてすむので、運用・管理のコストや時間を削減できます。
SaaS導入のデメリット
SaaSを導入することのデメリットもあります。
カスタマイズ性が低い
サービスごとに仕様が決まっていて、ある程度のカスタマイズはできますが、企業ごとの課題に合わせてカスタマイズまではできません。SaaS間の連携ができないシステムを利用すると、データの移行ができなくなることもあります。
セキュリティリスクがある
インターネットを利用する以上は、ウィルス感染やサイバー攻撃、不正侵入などのセキュリティのリスクはあります。したがって、ID、パスワード等の漏洩を防ぐ対応を社内で徹底する必要があります。
メンテナンスやバージョンアップなどで利用が制限されることがある
サービス提供会社のサーバーを利用するため、システム障害が起きた場合のメンテナンスがバージョンアップなどで、一定の時間利用が制限される場合もあります。普段から利用が制限された場合にどのように対応するかマニュアルを作成しておくとよいでしょう。
SaaSをビジネスでもっと上手に活用するためには?
SaaSの普及が進み、1社で複数のSaaSを利用することも珍しくなくなってきました。部門や部署別に種類の違うSaaSを利用していることもあります。その場合、それぞれのSaaSで同じ情報を登録するというような非効率な作業も起こりえます。
例えば、ある取引企業のデータを、営業部門では名刺管理システムに、マーケティング部門では顧客管理システムに、経理部門では会計システムに登録しているようなケースです。その取引企業が移転をして住所や電話番号が変わったとします。そのことを営業部門では把握していて、名刺管理システムの登録は変更していたのに、他の部門では把握しておらず、マーケティング部門では前の電話番号に連絡してしまったり、経理部門では前の住所に請求書を送ってしまうなどの無駄な作業が発生しかねません。
この問題を解決するために求められているのがシステムの連携です。最初から連携しているSaaSもすでに利用され始めています。取扱うデータ量が多い場合、SaaSを導入する際に連携は商品選びのポイントになりそうです。
BtoB企業向けSaaS 導入の注意点
「SaaSを使ったら業務効率化につながった」「特定の人にしか分からなかった知識や技術を共有できた」などの声を聞いて、安易に導入すると実際に使ったときに貴社の業務に合わない可能性もあります。導入を検討する際は次の点に注意しましょう。
ツールの特性や仕様を見極める
SaaSは、サービス提供会社によって、サービスの定義や指標が違います。各社のサービスの比較表や仕様のみでは、正確に性能を比べるのは難しいでしょう。SaaSには契約前にお試しで使えるサービスを行っているところが多いので、使ってみて貴社の業務と合うか確認することをお勧めします。
稼動環境を確認する
SaaSを導入するなら、そのサービスを実際に使用するパソコンに十分なデータスペースがあるか、OSのバージョンは合っているかなどを確認するのは大前提です。合わないサービスだった場合、購入しても実際使えないという事態に陥ってしまうので、注意しましょう。
費用を確認する
SaaSのサービスによっては、初期費用が無料のものもありますが、ライセンス料がかかるものもあります。それでも他に専用の機械やソフトを購入する必要がないため、初期費用を安く押さえられるのが魅力です。運用には月々費用がかかります。従量課金制やサブスクリプションの場合、長期間仕様したらそれだけ費用がかかってきますので、予算内でそれが賄えるのか、長期にかかる費用をシミュレーションするなどして確認してから判断しましょう。
SaaSの導入増加にともなう今後の課題
SaaSを導入後、会社の業務に合わせて上手く使うことができれば、期待通りの成果が得られるでしょう。しかし、会社側の運用に問題があるケースもあります。使う前に、そもそも担当者がどう使っていいか理解できていなかったり、そのサービスを使ってどのような課題を解決したらいいかわかっていなかったりするケースです。すると、次第に使わなくなり、導入が無駄な投資になる可能性もあります。SaaSを導入する際には、導入目的の明確化と、サービスの理解が必須です。
コロナ禍で外出を控える人が多かった時期も、売れ残る食品が多くなり、食品ロスが話題になったのは記憶に新しいことです。SaaSにおいても、導入したのに使われず無駄に料金を支払いつづけている問題が起きています。アメリカのCleanshelf社が発表した2019年の調査結果によれば、SaaS支出の最大30%(※)は、ライセンスの過剰購入や導入済みのツールと同じ機能のサービスを重複契約したことで無駄になっているそうです。日本でも、今後は利用ロスを無くすためにもSaaSのコスト管理や契約状況の管理の最適化が求められそうです。
※参照元: Cleanshelf 2019 SaaS Trends Report: Enterprises Waste Up to 30% of Annual SaaS Spend
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